初期踏力と中間踏力 -- ブレーキを「ふたつの動き」で分けて考える
コーナー手前でブレーキを踏み始めた瞬間、車が一瞬だけつんのめるように前に沈む。そこまでは毎回できているのに、踏力を保ちきれずにじわじわ減速が足りなくなる。あるいは逆に、最後まで強く踏みすぎて、クリップ手前で姿勢が崩れる。「ブレーキはちゃんと踏んでるはず」という感覚は正しいのに、数字だけ合わない。そんな状態を抜けるためには、ブレーキを1つの動きではなく、性格の違うふたつの踏み方の連続として扱う発想がいる。
最初の踏力はガツンと、ただし短く
ブレーキング全体を時間軸で見ると、前半と後半で求められる仕事がまったく違う。前半に必要なのは、車の重心を前輪にきれいに乗せ換えること。ここが曖昧だと、後ろのタイヤに余分な荷重が残ってしまい、ハンドルの効きが鈍い状態で中盤に突入する。
イメージとしては、最初の0.3秒くらいに「ガツン」と強めに踏む。目安として、そのコーナーで必要な最大踏力の7割から8割を最初の一拍で入れてしまう感覚だ。多くの初心者は、ここを徐々に強めていく「じわじわ入れ」にしがちで、それが前半の荷重移動を遅らせる原因になる。
- じわじわ型: 0 → 30 → 50 → 70 → 90 と、時間をかけて踏力が上がっていく
- ガツン型: 0 → 80 → 70 → 60 → 50 と、最初に山を作って、そのあとは下り坂
じわじわ型は安全運転には向いているけど、コーナー進入で姿勢を作る目的からは少しズレる。ガツン型のほうが「ブレーキ全体の仕事を前半にぎゅっと詰める」形に近くて、結果としてコーナーの入口の鋭さが変わってくる。
もちろん実際には「ガツン」の中にも微妙なグラデーションがあって、路面やマシンのグリップによって踏力の入れ方は少し変わる。乾いた路面のグリップが高い状態ならガツンは強めに、雨で路面がぬめっている状態なら同じガツンでも一段弱めに。車が路面に食いつく範囲の中でギリギリを狙いにいく感覚だ。
中間は「保つ」より「緩めながら探る」
後半、つまりブレーキの終わりに近づくにつれて、仕事の中身が入れ替わる。速度を削るフェーズは前半でおおむね終わっていて、残りの仕事は「車を曲げる準備」にシフトしていく。ここで同じ強さを維持し続けると、せっかく作った前荷重が過剰になり、フロントタイヤがグリップの限界を超えて外に滑りはじめる。いわゆるアンダーステア(ハンドルを切ってるのに曲がらない現象)の入口がここにある。
中間で必要なのは「保つ」よりも「ほどく」。踏力を少しずつ抜いていくことで、車の鼻先が内側に入り込もうとする動きを引き出す。この「ほどく速度」がタイムを作る最大の変数になる、と言ってしまっても言い過ぎではないくらい重要な工程だ。
踏力ゲージが手元に表示されているなら、それを見ながら練習すると早い。ただしゲージは結果の確認用で、実走中に見続けるものではない。あくまで走り終わったあとに「前半は80%入れていたのに、中間でまだ60%も残っていた」みたいに後から振り返るための道具として使う。
踏力の山が見えてくると、ブレーキが短くなる
初期と中間を分けて意識しはじめると、不思議なことが起きる。ブレーキを踏んでいる時間そのものが、ほんの少しずつ短くなっていく。前半に仕事を集中させたぶん、後半を引き延ばす必要がなくなるからだ。
- 同じ進入速度でも、前半の荷重移動が決まっていると、中間で早めに離せる
- 中間で離すのが早いと、コーナー中のグリップ余裕が生まれる
- 余裕があると、立ち上がりでアクセルを開けるタイミングが前倒しになる
こうやって、踏力の山のかたちを変えるだけで、1コーナーの中にいくつも連鎖反応が起きる。タイムが動くのはその連鎖の結果で、本質はあくまで「前半のガツン」と「中間のほどき」という2つのフェーズを別物として扱えるかどうかに尽きる。
STEP1では、ブレーキを姿勢を整える道具として捉える話を置いた。今回扱ったのは、その姿勢を作る工程の中身を前後半で分解する話だった。ここまで来ると、ブレーキという言葉が前より立体的に見えてきていると思う。特に前半の「ガツン」をまだ弱めに入れていた人は、次のセッションで少しだけ強めに入れ直してみてほしい。車の反応がひとつ違って返ってくる瞬間があるはずだ。
「山のかたち」を自分の中に持つ練習
最後に、このSTEPの練習としておすすめしたいことを1つだけ書いておく。走り終わったあとに、頭の中で自分のブレーキングを「山のかたち」としてイメージしてみる練習だ。各コーナーごとに、ブレーキ開始時の強さ、中盤のピーク、リリースまでの曲線を、想像上のグラフとして描いてみる。
- 第1コーナーは、最初にとがった山 → なだらかに下がる線
- 第2コーナーは、なだらかに上がる線 → 長めに保つ台形
- 第3コーナーは、2段階の山 → 間に小さな谷
こうやって自分の踏力のかたちを言葉や図でイメージできるようになると、次の周で「いまのはもっと尖った山にしたい」みたいな修正が打てるようになる。感覚だけに頼って走っていると、修正の方向がぼんやりしがちだけど、イメージとして持っておくと修正が具体的になる。
踏力計(入力のグラフを見られる機能)を持っているゲームなら、走り終わったあとに実際のグラフと自分の想像を照らし合わせてみてほしい。想像していた形と実際の形がずれている場合、そこに自分の認識の盲点がある。盲点が見えると、次の練習で埋めにいける場所がはっきりする。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。