経済の中の自分を俯瞰する -- 心地よいバランスを探す
「他人のプレイスタイルを真似しても、なんだかしっくり来ない」経済の話をどれだけ読んでも、最適解を覚えようとするほど、気づくと自分のゲームが色褪せていく瞬間がある。ここまでの4つのSTEPを通して、いろんな側面に触れてきた。でも、それら全部を統合した先にある問いは、もう少し大きい。自分にとっての心地よい経済とは何か、という問いだ。このSTEP5では、ゲーム内経済のなかに自分自身を入れて俯瞰する考察の時間に、一緒にたどり着こう。
経済は自分を入れて完成する
ゲーム内経済は、プレイヤー全員の集合行為で成り立っている。素材を採取する人、それを加工する人、装備にする人、装備を使う人、マーケットで売り買いする人。それぞれの行動が絡み合って、経済という全体が動いている。
この構造のなかで、自分がどの位置にいるかを考えたことがあるだろうか。多くの人は、自分を経済の「利用者」としてだけ捉えている。でも実際は、自分もまた経済の一部として機能している、という視点が抜けていることが多い。
自分の経済的な「顔」を描く
自分がこのゲーム内経済のなかで、どんな存在として位置づいているかを描いてみる作業をしてみよう。
- 自分はよく採取する側か、それとも買う側か
- 生産(製作)に時間を使うタイプか、消費に使うタイプか
- マーケットで積極的に取引するか、それとも必要なときだけ触るか
- 自分の資産を将来のために貯めるタイプか、今の体験に使うタイプか
これらの問いに答えていくと、自分の経済的な顔がぼんやりと浮かんでくる。正解はない。自分が無意識のうちにとっている位置が、言葉として見えてくる、という作業だ。
他人と同じ経済を生きる必要はない
多くの攻略記事や配信は、「効率のいい経済の回し方」を教えてくれる。それ自体は役に立つ情報だ。でも、その効率は誰にとっての効率なのか、という視点は抜けていることが多い。
- 配信者にとっての効率は、視聴者が見て楽しめる時間の使い方と連動している
- プロプレイヤーにとっての効率は、最速でトップに立つための時間の使い方に偏っている
- 廃人プレイヤーにとっての効率は、圧倒的な時間資源を前提にした使い方になっている
これらの人たちの効率を、週に5時間しかプレイできない自分がそのまま真似しても、手触りが合うはずがない。自分の経済は、自分の生活と時間量とペースのなかで作り直す必要がある。
心地よさという軸 -- 経済の第5のリターン
前のSTEPで、ゲームから得られるリターンを4種類(資産/上達/体験/関係)に分けた。最終STEPで、もう一つだけ加えたい。それが「心地よさ」だ。
心地よさは、他の4つとは性質が違う。数値では測れないし、他人と比較もできない。でも、長くゲームを続けている人ほど、この心地よさを自分の中心に置いている傾向が強い、という印象がある。
- ログインしたときの気分
- コンテンツに向かうときの期待感
- マーケットを開くときの落ち着き
- ログアウトするときの満足感
これらの感覚の総和が、その人にとってのゲームの心地よさを作っている。効率的な経済運用をしていても、心地よさが削れていたら、その選択は自分には合っていないのかもしれない。
長期プレイの本当の敵 -- 飽きではなく不快感
MMORPGを長く続けている人に話を聞くと、飽きで辞める人より、不快感の蓄積で辞める人のほうが多い、という話に行き当たる。
- 課金しすぎて後悔するようになった
- 周回作業が義務感に変わってしまった
- マーケットで損をして以来、取引が怖くなった
- ギルドの人間関係で疲れて、ログインが億劫になった
これらは全部、心地よさの反対側にある不快感だ。不快感の積み重ねが閾値を超えた瞬間、プレイヤーは静かにログインしなくなる。逆に言えば、心地よさを守る運用ができている人ほど、ゲームとの関係を長く保てる、という話になる。
経済と楽しさの交点 -- 自分だけのバランス
自分にとっての心地よい経済を言葉にしてみよう、という提案でこの記事を締めていきたい。
- 月にどのくらい課金すると、後悔せずにゲームを楽しめるか
- 週にどのくらいの時間を使うと、生活が削れずゲームも濃く感じるか
- どんな活動が、自分にとって「やっていて一番落ち着く」ものか
- コミュニティとの関わり方で、自分が無理をせず続けられる距離はどれくらいか
これらの問いに対する答えが揃うと、自分だけの経済バランスの輪郭が見えてくる。これは他人には使えない、完全にパーソナルな設計書だ。でも、だからこそ、自分にとってはこれ以上なく有効な地図になる。
自己診断 -- 自分の経済を俯瞰できたか
- 経済的な顔 -- 自分の位置を言葉で描けるようになったか
- 他人との距離 -- 他人の効率を真似しないで済む軸があるか
- 心地よさ -- 第5のリターンとして意識できたか
- 自分の設計書 -- 心地よい経済の輪郭を言葉にできたか
最初の一歩 -- 1行の経済ポリシーを書いてみる
「自分にとってこのゲーム内経済で大切なことは、○○だ」という1行を、自分の言葉で書いてみる。
- 「自分にとって大切なのは、毎日のログインが軽やかなこと」
- 「自分にとって大切なのは、課金で後悔しないラインを守ること」
- 「自分にとって大切なのは、上達の手応えを失わないこと」
この1行は、正解じゃなくていい。むしろ、書いたあとに変わっていくのが自然だ。でも、一度書いておくと、迷ったときに戻ってこられる場所になる。
「ゴールドが貯まらない」の悩みから始まったシリーズが、「自分の心地よさを見つける」という場所までたどり着いた。経済の話は、結局のところ、自分とゲームとの距離感の話だった、という発見を、ここに置いていこう。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。