偵察は「もったいない」から始まる -- 最初の壁をほどく
「偵察ユニットを出すのって、なんか損してる気がする」RTS(リアルタイムストラテジー。経済・軍事・情報を並行して競り合うジャンル)を始めて数十戦くらい重ねた頃、このつぶやきが頭の中に落ちてくる人は少なくない。兵を一体削るのも、農民を一体抜くのも、手元の積み上げを崩す行為に見えてしまう。でも勝っている人ほど平然と偵察を出している。この感覚の違いを一緒にほどいていこう。
偵察 -- 戦う前の情報収集という一工程
偵察(スカウト。自軍のユニットを使って相手の拠点や動きを確認する行動全般)は、RTSやオートバトラー(味方ユニットが自動で戦う形式のゲーム)の多くで用意されている基本行動のひとつだ。相手がどんな戦術を組んでいるのか、どの建物を立てているのか、資源はどこから取っているのか。こういった情報を試合開始から数分のあいだに集めに行く一連の動きを指す場合が多い。
前提として、RTSは相手の情報を見ずに進めても「それなりに回せてしまう」ジャンルでもある。決まった手順(ビルドオーダー。開始から数分の生産と建築の順番)を覚えておけば、序盤までは偵察なしでも問題なく走れる。そのぶん、「偵察しなくても勝てる時がある」という経験が積み上がりやすい。ここが壁の入口になっている。
もったいない感の正体 -- 見えている損と、見えていない得
偵察を出すと、出した瞬間にユニットが1体減る。この損失は目に見える。一方で、偵察から得られる情報の価値は、後からじわじわと効いてくる種類のものだ。損は即時、得は遅延。この非対称が「もったいない」という感覚を生んでいる場合が多い。
見える損だけを天秤に乗せていると、秤はいつも偵察の反対側に傾く。「この1体で戦力を削るより、生産に回したほうが得」という計算が、頭の中で毎回勝ってしまう。だから偵察が続かない。
同じ構図は、日常の中にも転がっている。引越し前の下見、初めて行く店の事前調査、旅行前のルート確認。どれも時間という目に見える損を払う代わりに、本番の判断を軽くしてくれる。下見を省いた旅行で迷子になった経験が1回でもあれば、偵察という言葉の手触りが少し変わってくるはずだ。
最初の一歩 -- 2分間だけ偵察を走らせてみる
壁をほどくのにいちばん効くのは、頭の整理ではなく手を動かすことだったりする。次の1戦でだけ、次の手順を試してみよう。
- 開始2分 -- 初手の農民生産が落ち着いたタイミングで、偵察用の1体を決める
- 片道1往復 -- 相手の拠点の外周を1周だけさせて、戻ってくる
- 観察の目標は1つ -- 相手の生産建物が何かひとつでもいい、確認して帰る
やってみると、これだけで「相手が何を目指しているっぽいか」の輪郭がぼんやり見えてくる。当てにいかなくていい。輪郭でいい。全部を掴もうとしないで大丈夫。
見えた情報をどう扱うか、は後回しでいい
偵察を始めたての頃にぶつかるもうひとつの壁がある。「見えた情報をどう使っていいかわからない」という戸惑いだ。情報は取れたけれど、それを自分の動きにどう反映させればいいのか、その場で考えきれない。結果として「見ただけ」で終わってしまう。
焦らなくて大丈夫。このSTEPでは、使い方は一旦後回しでいい。情報を取りに行く習慣の方を先に作る、という順番のほうが続きやすい。活用の話は次以降のSTEPで少しずつ積んでいく。
自己診断 -- 偵察の最初の壁に手がかかったか
- 損得の非対称 -- 見える損と遅延する得の話が腑に落ちたか
- 2分トライ -- 次の1戦で2分開始の偵察を試す気持ちになれたか
- 観察目標1つ -- 持ち帰る情報をあえて1つに絞れる心構えになったか
- 使い方の保留 -- 使い方は後回しでいい、と自分に許可を出せたか
最後の許可が意外と効いてくる。「やるからには完璧にやらなきゃ」と思った瞬間に、偵察ユニットを出す手が止まる、という詰まり方はけっこう多いジャンルだったりする。
このSTEPのまとめ
- 壁の正体 -- もったいないという感覚の奥にある、損得の時間差
- ジャンル特性 -- 偵察なしでも序盤は回せる、が同時に罠でもある
- 最初の一歩 -- 2分・片道1往復・目標1つ、で始めてみよう
- 完璧主義の保留 -- 情報の活用は次STEP以降の話にしておいていい
偵察ユニットを1体差し出す抵抗感は、誰の最初にもあるものだと思う。その抵抗は感覚の癖なので、数戦の体験で少しずつ上書きされていく性質のものだったりする。もったいない、と一瞬だけ感じたら、その感覚ごと2分間の散歩に連れていこう。戻ってきた頃には、盤面の見え方が少しだけ変わっている場合が多い。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。