エンドの先にある「自分のMMORPG」
「結局、ここまで来て、ゲームの本当の楽しさって何だったんだろう」エンドコンテンツを一通りやり切って、装備も揃え、レイドもクリアし、ランクも登りきった頃、この静かな問いが胸の奥に立ち上がってくることがある。与えられた目標を全部達成した後に残るのは、次の目標がない空白だ。この空白をどう埋めるかで、長期プレイの形が決まっていく。公式が用意したエンドの先にあるのは、自分だけが発明する「自分のMMORPG」という、もう一つの遊び方だ。
与えられた目標が尽きた後
ゲームの設計は、プレイヤーに目標を与える仕組みで成り立っている。レベル上げ、装備集め、ストーリークリア、レイド攻略。どれも、運営が用意した目標を追いかける構造だ。
問題は、この目標が有限だということだ。どんなに広大なゲームでも、与えられた目標は必ずいつか尽きる。ここで分かれ道がある。
- 卒業する道 -- ゲームに用意された目標が尽きたタイミングで静かに離れる
- 発明する道 -- 自分で新しい目標を作り出して、ゲームの中に残る
どちらが正しいというわけではない。ただ、発明する道を選んだプレイヤーには、与えられた目標を追っていた頃には見えなかった景色が開ける、という話がある。
「自分のMMORPG」という発想
「自分のMMORPG」とは、運営が用意したゲームの上に、自分独自のレイヤーを重ねる遊び方のことだ。同じゲームを遊んでいても、遊び方のレイヤーが違えば、それはもはや別のゲームに近い体験になる。
- ストーリーの考察を深堀りして、同人的な解釈を積み重ねる
- 珍しい装備の組み合わせを探して、自分だけの見た目を作る
- 特定のロケーションだけを巡って、ゲーム内観光家になる
- 戦闘ログを解析して、プレイスタイルの検証に没頭する
- 他プレイヤーの遊び方を観察して、自分なりの型を抽出する
これらは、公式が推奨している遊び方ではない。でも、長期プレイヤーの多くは、こういう自分だけのレイヤーを持っていることが多い。
発明の種 -- 自分の執着を掘る
「自分のMMORPG」を発明するための最初のヒントは、自分がすでに持っている執着のなかにある。
- 装備の見た目にやけにこだわる
- 特定のエリアが妙に好きで何度も訪れる
- ストーリーのあの場面だけ何度でも思い出す
- 特定のジョブの操作感がどうにも好きだ
こういう小さな執着は、自分でも気づいていない楽しみの源だ。その執着をもう一段深く掘ると、自分だけの遊び方の種が見つかる場合がある。執着は、発明のための羅針盤だ。
記録という遊び -- 自分の足跡を残す
もう一つ、発明の遊びとして扱いやすいのが、「記録」という行為だ。
- スクリーンショットを整理してアルバムを作る
- 日々のプレイ感想を短い日記に残す
- 印象的な出来事を自分だけのまとめに書く
- 自分のキャラの成長過程を時系列で並べる
記録はすぐに形になる成果ではない。でも、1年、2年、3年と続けていくと、それ自体がかけがえのない遊びに育っていく。自分だけがアクセスできる、自分のゲームのアーカイブ。こういうものを持つと、ゲームとの関係が重層的になってくる。
発明の先にある自由 -- 誰のためでもない遊び
自分のMMORPGを発明できるようになると、遊びの根本が変わってくる。それまでは「誰かのための遊び」だった時間が、「誰のためでもない遊び」に変わる瞬間だ。外からの動機が尽きた後に残るのは、「ただ遊びたいから遊んでいる」という、最も原初的で最も自由な状態だ。
執着がないから、いつでも離れられる。いつでも離れられるから、かえって長く付き合える。この逆説が、「自分のMMORPG」を持っている人の共通する特徴になっている場合が多い。
卒業も一つの発明 -- 終わり方をデザインする
最後に、もう一つだけ大事なことを書いておきたい。「自分のMMORPG」を発明するという話と並行して、「自分なりの卒業」も発明していい、という話だ。
人生のなかでゲームに使える時間は、有限だ。どんなに愛したゲームも、どこかで距離が生まれる時期が来る。その時期を、無理に引き延ばす必要はない。自分なりの終わり方をデザインする発想があっていい。
- 最後のログインに、特別な場所を訪れる
- 仲間に静かに別れを告げる
- ゲームへの感謝を言葉にする
- いつか戻ってくるかもしれない未来に、扉を開けておく
卒業は終わりではなく、別の形でゲームを持ち帰る行為だ。ログインしなくなっても、そのゲームで得た経験は自分の中に残る。
自己診断 -- 自分のゲームに足が届いたか
- 目標の有限性 -- 公式の目標はいつか尽きると受け入れたか
- 執着の発見 -- 自分のなかの楽しみの種を掘れているか
- 記録の遊び -- 自分の足跡を残す発想を持てたか
- 原初の遊び -- 誰のためでもない遊びに触れたか
- 卒業のデザイン -- 終わり方も発明できると理解したか
最初の一歩 -- 自分の執着を1つ言葉にする
シリーズ全体の最後の一歩として、自分のゲームのなかで、今一番執着しているものを1つだけ言葉にしてみよう。些細なことで構わない。
- 「このキャラの見た目が、どうしても気に入っている」
- 「このエリアの夕暮れが、何度見ても好きだ」
- 「この戦闘音楽を聴くと、いつでも戻りたくなる」
この一文が、自分のMMORPGの出発点になる。「ストーリー終了後に立ち止まる時間を作る」という入口から始まったエンドコンテンツの話が、「自分のMMORPGを発明する」という場所まで辿り着いた。与えられた目標を追いかける時期、義務感に縛られる時期、選択に迷う時期、波に翻弄される時期、そして発明する時期。全てのフェーズが、長く遊ぶ人生の一部になる。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。