裏をかく動きと、ただの奇策のちがい -- 通るウラと通らないウラ
「相手の裏をかこうとして、変な動きを混ぜたら逆に失点した」。読み合いの意識が芽生え始めた人が、一度は通る失敗じゃないだろうか。自分では裏をかいたつもりでも、相手からすると「なんだ今のぎこちない動きは」で終わっている。それは裏をかいたのではなく、ただの奇策だったケースが多い。このSTEPでは、通る裏と通らない奇策の境界線を、もう少し具体的にほどいていきたい。
裏をかく動きには「前振り」が要る
マジックを例に取るとわかりやすい。カードが消えたり現れたりするマジックが成立するのは、観客が「カードがここにある」と信じ込んだ直後だからだ。信じ込む前にカードが消えても、それはただの動作にしか見えない。観客の思考を一度誘導しておかないと、同じ手品でも成立しない。
スポーツゲームの読み合いも構造は同じで、裏をかく動きは必ず前振りとセットになっている。相手に「次はこう来る」と一度思わせてから、違う選択肢を出す。この「思わせる」の部分があって初めて、裏は裏として機能する。前振りなしで奇妙な動きを出しても、相手にとっては情報ゼロの変な動きでしかない。
前振りを作る3つのやり方
前振りの作り方にはいくつかパターンがあって、代表的なのは次の3つだ。
- 同じ動きを2〜3回繰り返す -- 同じ攻撃パターンを続けると、相手はそのパターンを予期して守備位置を調整してくる。そこに違う角度を入れると、用意された守備が崩れる
- 強めに見せて弱く仕掛ける -- 大きく振りかぶるような動きを見せてから、実際には小さく繋ぐ選択肢に切り替える。相手の読みの軸をわざとずらす
- 時間差を入れる -- 同じパターンをテンポを変えて出す。速いテンポで慣らしたあとに、一度遅らせてから同じパターンに入る
どれにも共通しているのは、相手の頭の中に一度予想を作らせているという点だ。予想のない場所に変な動きを投げても、相手は何も反応しないから裏にならない。予想が先にあって、それを少しだけ外す。これが裏をかくという動作の本質に近い。
奇策は、期待値が低い
一方、前振りなしで突然出す奇策は、期待値が低い。なぜかというと、相手が予想していなかった動きをしても、相手もまた準備していないから、対応が偶然正解になってしまう場合があるからだ。奇策は相手のミスを誘うのではなく、相手の偶然に負ける確率が意外に高い選択肢になる。
上位帯のプレイヤーが奇策をあまり使わないのは、この期待値の低さを経験で知っているからだと思っていい。使うとしても、試合全体の中でごく限られた回数にとどめている。奇策の回数を無限に増やせば通るという発想は、読み合いの原理からすると逆向きに働く場合が多い。
「裏を見抜かれそうな場面」で別の選択肢を用意する
前振りを作ったあと、裏を出すかどうかの判断にも工夫がいる。相手もまた観察しているので、毎回同じ前振りのあとに裏を出していると、いつか裏そのものが読まれ始める。ここで重要なのが、裏を出さずに通常の選択肢をそのまま繰り出す試合を混ぜることだ。
前振りをしたのに、そのまま前振り通りの動きで終わる。これをたまに挟むだけで、相手の中の「あの前振りのあとには裏が来る」という読みが成立しなくなる。つまり、裏をかくためには、裏をかかない試合を意図的に作っておく必要がある。この視点は読み合いを長く続けるほど効いてくる。
裏は「相手を騙す」じゃなく「相手の予想を動かす」
ここまで読んで感じるかもしれないけど、裏をかく動きは、相手を騙すという言い方よりも、相手の予想を少しだけ動かすという言い方のほうがしっくりくる。騙すという発想だと、どうしても奇策寄りになってしまう。予想を動かすと捉えると、前振り→予想の形成→ずらしという流れが自然に意識できる。
読み合いが強いプレイヤーは、この「予想を動かす」作業を細かく積み重ねている。1つの大技で一気に裏をかくのではなく、小さな予想のズレを試合全体で積み重ねて、相手の判断基準をゆっくり傾けていく。最終的にはこの微細なズレの積み重ねが、大きなスコア差に変わっていく。
今日試してみたいこと
次の1試合では、攻撃パターンを意図的に2回同じにしてから、3回目だけ違うパターンを出してみる、という最小の前振りを試してみてほしい。派手な裏じゃなくていい。2+1の構造を作るだけで、3回目の攻撃の通り方が少し違って感じられるはずだ。そこに違いを感じられたら、裏をかく動きの感覚が育ち始めている証拠になる。
冒頭の「失点」に、もう一度戻ってみる
このSTEPの頭で話した「裏をかこうとして逆に失点した」という出来事を、ここでもう一度思い返してみたい。あの失点は、たぶん動きの選択が悪かったわけではない。前振りの段階が丸ごと抜けていたから、裏として成立しなかっただけだ。前振りを一段挟んでいれば、同じ動きでも通っていた可能性は高い。
読み合いの練習を続けていくと、この「前振りの一段」を丁寧に置けるかどうかが、裏の成功率を静かに押し上げていく。奇策と裏の差は、派手さではなく段取りの数にあって、2回の同じ動きと1回のずらしという地味な積み重ねが、いつの間にか自分の武器に変わっていく。冒頭のあの失点を、裏が通らなかった失敗ではなく、前振りを挟む練習の入り口として置き直せたら、このSTEPの目的はひとまず達成されている。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。